日本センチュリー交響楽団の第2ヴァイオリン副首席奏者の高橋宗久が桜井会長にインタビューさせていただきました。
以下、高橋宗久からのコメントと合わせてお読みください。
この度、2月27日、28日の獺祭コンサートに先駆けて、旭酒造会長・桜井博志 様へインタビューを行いました。
お酒造りへの想い、今回のコンサートへの意気込み、そして現在のコロナにおける人としての在り方を伺えました。
ビジネスパーソンの方は勿論のこと、お酒好きもそうで無い方も、【今をどう生きるか】という事を希望を持ちながら考える事のできる内容となっておりますので、是非ご覧下さい。
この場をお借りして、拙い質問にも関わらず真摯な姿勢でお話頂けた桜井博志会長をはじめ、スケジュール調整にご尽力下さった旭酒造のスタッフの皆様に御礼を申し上げます。
2月12日㈮ 10時~ 高橋宗久から桜井会長へのインタビュー
―高橋 本日は宜しくお願い致します。お忙しい中お時間を頂き、本当にありがとうございます。
お話を伺える事を心より待ち望んでおりました。
桜井 宜しくお願い致します。
―それでは早速ですが、桜井会長の、お酒づくりに対する理念やミッションを教えて頂けますか?
桜井 最初から凄い直球で来ましたね(笑)
やっぱり、「本当に美味しいお酒をお客様に届けよう」という事です。
今迄の日本酒業界は技術的にコンテストで一番を取る事、営業的には沢山売る事をしてきました。
だけど「お客様に美味しいお酒を飲んで頂こう」という所がスポッと抜けていたと思います。
獺祭の場合は、お客様に美味しいお酒を飲んで貰わないと駄目、この一点です…ある意味青臭いですよね(笑)
でも、その青臭さがあるからこそ、30年間に亘って新たな市場を切り拓いて来れたのだと思います。
―高橋 想い一途に一直線ですね!大好きです。次のご質問に参りたいと思います。
「お酒を造っていて幸せな時、または、コレがあるからお酒造りはやめられない」といい瞬間はありますか?
桜井 そうですね…うーん…「上手くいなかい時」と言ったらカッコ良すぎますけれど…やっぱり上手く行っていないときの方が………幸せ、ですね。
―高橋 それはトライし甲斐があるから、でしょうか?
桜井 旭酒造もそれなりの規模になってきたので、上手く行っているときは後ろからソーッと見ているだけしか出来ないんです、会長が口を出すわけにいかないじゃないですか(笑)
―高橋 そうなんですね(笑)
桜井 上手くいなかくなったら、ここをこうしたら、とかここが問題じゃないか、とか言いながら手を出せるので、【工夫のし甲斐】がありますよね。
―高橋 工夫のし甲斐がある、という一言に職人としての魂を感じます。
桜井 例えば、ノーベル賞を受賞なさった鈴木章さんも、「100のうち99は研究を失敗する。だからやってこれたんだ」と仰っています。ユニクロの柳井正さんも同じような事をお話されています。
人間の社会も同じではないでしょうか。うまく行かない事の連続で泣きながら歩いて、それが続いていく。そうするとその中に成功に結びつく何かが現れるのではないかと思いますね。
―高橋 1度失敗したからといって、諦めてはいけないという事ですね。
桜井 そこは難しい所で、間違っている方にずっと行ってしまうとマズイので、見極めは重要です。しかし、沢山の失敗を重ねないと成功しないと言うのは真実でしょう。
―高橋 ありがとうございます。今回の「磨」というお酒について、「通常の獺祭と違う」と感じた事を教えて頂けますか?
桜井 今回は…技術や発酵がどう違う、というより背景が大きく違うと思います。今回の為に作曲してくださる和田さん、指揮の飯森さん、オーケストラの日本センチュリー、これだけ皆さんの気持ちが集まってくれています。
これは【絶対に良い酒にしないといけない】とまず思いました。
実は1月に一本搾ってみましたが、音楽を聴かせた影響か酵母が元気すぎて発酵のバランスが良くなくて、流してしまったんです。
普通の獺祭だったら悪くないのかもしれませんが、僕らの思う磨のレベルではないと感じてしまったので。
―高橋 そうだったんですね。今回の磨は、通常の獺祭の中でどの獺祭がベースとなっているのですか?
桜井 二割三分(精米歩合23%)がベースになっています。今回は、というより獺祭は全て二割三分がベースとなっていて、三割九分(精米歩合39%)や四割五分(精米歩合45%「獺祭45」)を造っています。
―高橋 そうなんですね。今回のお酒を造っていて、「このお酒を飲んだお客様がどんな顔になるか」というイメージはありましたか?
桜井 それはやはり、「美味しいと笑顔になる」です。それをイメージして造りました。
―高橋 確かに!美味しいと自然と笑顔になりますね。 私は個人的に今回が楽しみすぎて、その気持ちを伝えたらお客様がコンサートにお越し下さる事になった、となった事が何件もあります。
桜井 結局のところ、そうだと思います!自分達が面白がって楽しくないと、周囲に広がっていきませんね。自分たちが楽しんでいると、それはダイレクトにお客様に伝わりますね。
―高橋 そうですね、自分が楽しんでいる時の影響力は本当に凄まじいと思います。
桜井 僕はお酒の事しか話せませんが、美味しいお酒は数多くあります。しかし、美味しいお酒でも想いが乗っていないお酒は「よくできているお酒」で終わってしまいます。ですが、想いが乗っているお酒は「あー、美味しいなぁ」とお客様に思って貰える様な【お客様の中に残る】お酒になるんです。
―高橋 それは音楽も同じです!演奏者の想いが乗る事で、お客様の心に響くことが出来ると思います。 何か、お酒飲みたくなって来てしまいました(笑) ※インタビュー時は午前10時過ぎ
桜井 本当ですね、飲みながらインタビューしたら面白いでしょうね(笑)
―高橋 それでは最後のご質問です。桜井会長はこれまでにも酒蔵の危機を始め、様々な困難を乗り越えられました。現在、このコロナという危機の中でも止まることなく様々な取り組みをされておりますが、危機や困難の中でも「諦めない姿勢の原動力・源泉」は何処にあるのでしょうか?
桜井 来年の春に本社蔵の前に新しい橋がかかるんです。 (※2017年の西日本豪雨災害で本社蔵の前の川が氾濫し、掛かっていた橋が倒壊)
この橋に関連していますが、人間は困難や危機を乗り越えて現在の社会があるんですね。
例えば、チグリス・ユーフラテス川の氾濫により肥沃な大地が生まれ、メソポタミア文明が出現し、ペストが起きた事でルネッサンス時代が出来ました。人間は、災害や困難を乗り越えて、その中で前に進んできましたね。
獺祭も同じで、失敗を沢山しても屈む事をせずに、「何とかしてやろう、乗り越えよう」と思ってやった来たので今があると思っています。
ですので、失敗したときは成功する、という事で私の中に体験として入っているんです。
少し言葉にすると軽々しいかも知れませんが、本当なんです。
―高橋 危機や困難を乗り越えて来た方だからこその重みや説得力を感じます。このお話は、私個人の人生の指針としても非常に腹落ちしました。
それでは、インタビューは以上となります。ありがとうございました。
次回はお酒を飲みながらお話したいですね!
また宜しくお願い致します。
桜井 本当ですね。また宜しくお願い致します。